おはようございます!
最近個人インスタを再開した中桐です。
主に新モデルハウスGMZの施工の振り返り含め、様々な思いや取り組みを発信しています。
よければ、覗いてフォローしてやってください♪
それでは、欧州視察19日~27日までの9日間をレポートします。
ということで、今回このレポートの目次としてはこんな感じで考えています。
出国 :はじめに
1日目:STEICO視察
2日目:バウビオロギー協会 他
3日目:ヘルマン・カウフマンと建築
4日目:カーボンポジティブ、ブルーマー・レーマン
5日目:HAGA社、森づくり 他
6日目:集合住宅でエンボディドカーボンを学ぶ、ホームセンター 他
帰国 :まとめ
はい!早速ですが、始めます。
出国:はじめに
まず今回欧州行きを決めた動機を少しお話しておきます。理由は大きく言うと3つあります。
1つ目は昨年から、これだと思いパッシブハウスを今年完成させ、そのモデルハウスで解説や説明している私が、一度もPH(パッシブハウス)発祥の地であるドイツの建築、ヨーロッパの進んだ家づくりを見ていないというのは、どうも説得力に欠けるなと薄々感じていました。オリジナルを見て、体感していないというのは、どこまでいっても本質を理解できていないのでは?という自分の中の「?」を解消するためというのが一つです。
2つ目はこのブログでも結構出てくる建築コミュニティ「釿始」。今回そこからの参加者も多く、志を同じくする同志と一緒に学びにいけるチャンスは今年が一番良いということ。このメンバーで共有する時間はきっとかけがえのないものになると思い、そして時間軸的にもパッシブハウスモデルが完成した今年に行くべきだと感じたということが一つ。
最後3つ目は、これからの家づくりはこの先どの方向へ向かうべきか?性能のその先に何があるか?企業として永続していくため、自分の中で決めている方向性を確かめに行ったというのが一つ。
以上、他にも細かくは色々ありますが、この3つが大きな理由で今回参加しました。
とにかく「何度か行かないと一度では分からないよ」とみなさん言われる中、可能な限り一度で、今自分にとって、会社にとって必要なものを全て持ち帰ってやろうという気持ちで参加しました!
スケジュール的にもそうでしたが、旅行気分は微塵もなく建築づくしの真剣な9日間でした。

日本時間19日(日)の夜、関西国際空港発でフィンランド経由でドイツへ入りました。

ヘルシンキ空港のゴミ箱はかなり細かく区分けされていました。
デザインや文字フォントがキレイ。こういった所にもその国の思想が現れていると思います。
しっかり見る目や気づく視点をもっておきたいと思います。


1日目 -day1-
STEICO本社視察
ここからが視察の本番。日本時間22時半発の飛行機で出発し、ドイツに到着したのは現地時間の朝9時半。
そのままバスに乗り換え、STEICO本社へと向かいました。
寝たような寝ていないような曖昧な睡眠のまま、しかも時差が7時間あるので体感では一日約31時間。
1日がとにかく長い…(笑)

木質断熱材メーカー「STEICO」
この【STEICO(シュタイコ)】という会社は、木質系断熱材を製造・販売する世界的メーカーで、日本にも製品は輸入されています。
まず、座学からということで、STEICO社のMarcel氏とFalk氏から企業の変遷や取り組み、自社製品の紹介レクチャーを受けました。




日本ではまだ採用している会社が少ない木質断熱材。
↓こんな断熱材です。写真はボード系ですが、後述する吹き込みタイプもあります。

その有益性として主に挙げられるのが次の3点。
- 自然素材であること
→ 木そのものなので、製造時のCO₂排出量をほぼゼロに抑えられる。 - 再利用できること
→ 吹き込みタイプの木質断熱材は再利用が可能で、循環利用できる。 - 蓄熱性能が高いこと
→ 断熱材そのものが熱をため、昼間に得た熱をゆっくり放出して室内環境を安定させる。
日本ではまだ輸入商品に頼る形ですが、もし国産化が進めば、環境問題が深刻化する今、ジワジワと増え一気に普及しそうな気もする建材です。
DIY文化の違い
少し脱線しますが、欧米のホームセンターには本当に何でも揃っています。
私もアメリカ居住中によく利用していましたが、家1軒分の資材、例えば窓や玄関ドア、キッチン、トイレ、木材、断熱材、工具などなど。これらほぼ全てホームセンターで手に入ります。しかも購入後、開封後でも未使用であれば全額返金で返品もかなり自由にできる。(※アメリカはそうでした)
このあたりが「DIYが当たり前の国」と「日本」との文化的な違いかもしれません。
吹き込み実演
話を戻して座学後、Falk氏が【STEICOzell(シュタイコゼル)】という吹き込み用木質断熱材を、透明な箱に実際に吹き込む実演を行いました。

↑こうしても落ちてこない、と密度もしっかり吹き込んである証拠だというFalk氏。



密度の調整や使用機械の仕様、日本でも使用できるか、など質問が飛び交っていました。
ちなみに↑吹き込み用のこの機械(※X-FLOCと書いてあった)日本での販売はまだ正式には始まっていないようです。
希望者は代理店を通して要確認だそうです。数百万円するそうです。
弊社では現状、木質断熱材を標準仕様としてはいませんが、今後の選択肢の一つとしてこの時のことをしっかり記録しておきたいと思います。
ミュンヘンの夜
夜はミュンヘンのマリエン広場にある【新市庁舎】地下の伝統的なビアホールで夕食。
「新」といっても19世紀末(100年以上前)に建てられたネオゴシック様式の建物で、その造形美と迫力はまさに圧巻。
イメージしやすいのはUSJのハリポタゾーンのリアル版(言葉の表現が陳腐?…笑)




翌日の講師でもある、建築家ホルガー・ケーニッヒ氏(写真左)ともここで合流し、食事を楽しみました。
ちなみに写真右は今回のツアー主催イケダコーポレーション副社長の加藤さん。
別件打ち合わせで来られており、2日間だけご一緒しました。

ドイツといえば…
せっかくなので、少しだけ食事も紹介!
ちょっとした豆知識ですが、0.5Lのラインより上まで注ぐというルールになっており、下回ると法律違反になるそう。結果少し上まで注がれています!
料理はソーセージやチキンなど、どれも美味しくデザートまで頂きました。



1日目のまとめ
初日のまとめしては、木質断熱材の大手メーカーSTEICO本社で、「木質であることの意義=環境へ有益性」を学び、ミュンヘンの街並みや伝統的な建築物をこの目で見て触れることができ、感性を磨くことができた初日でした。
ここで、なんとなく引っかかったのは環境先進国であるにもかかわらず、街中で多くの人が普通にタバコを吸っていること。至る所に灰皿があり、「環境への意識」と「健康への意識」にギャップを感じました。
現地の方にも理由を聞きましたが、明確な答えはなく…まぁ、それも含めてヨーロッパなのかもしれません(笑)
得意のポジティブ思考で、この時点では一先ず納得しておくことにしました。
2日目 -day2-
IBN(バウビオロギー研究所)
朝早くからバスで出発し、ドイツのローゼンハイムにあるIBN(バウビオロギー研究所)へ向かいます。
まず、バウビオロギーとは?ってところを掻い摘んでお話すると、Bau-Biologieと書くのですが、
ドイツ語でBAU=建築・BIOLOGIE=生物学を表します。直訳すると「建築生物学」
要するに「人が健康で快適に暮らせる建築を科学的に研究する学問」のこと。そう、数学や物理学と同様の学問です。


もう少し簡単に言うと「家が人にどんな影響を与えるか、人の体の仕組みから考える」 といった感じかなと思います。
例えば、空気の質や光の入り方、音や温度の感じ方まで、暮らす人がどうすれば「心と体が心地よくいられるか」を大切にする考え方です。
私はこれが「性能のその先」にあるもののヒントだと思っています。今回ツアープログラムを見て、ここに来ることが大きな楽しみの一つでした。
IBNの変遷と「バウビオロギー25の指針」
そんなバウビオロギーの本拠地であるIBNにて所長のシュナイダー氏のレクチャーから始まりました。

当然ドイツ語で書かれているので、前日のSTEICO本社でもそうでしたが、このツアーのコーディネーターである滝川 薫さんに通訳してもらいながらのレクチャーです。
ご紹介遅れましたがこの滝川さん(写真右端の女性)もスゴい方で、スイス在住なのですが詳しくはこちらから見てみてください。
建築知識のある通訳の方は稀有で滝川さんの通訳があってこそのエコバウツアーといっても過言ではないと思います。
シュナイダー氏からはこのIBN(バウビオロギー研究所)の変遷と、バウビオロギー新25の指針について。

「快適な室内環境」・「建材の選択」・「空間の造形」・「持続可能な環境の形成」・「エコソーシャルな生活空間」の5つの分類にそれぞれ5つずつ指針があり、合計25の指針となっており各建築や建材等を評価しているのとのことです。

また、この研究所が建築された様子や、その後の実測についてもレクチャーして頂きました。一部ご紹介すると、この建物には基本的に冷房がなく、自然換気で冷却しているとのこと。

室温が26℃以上になる日を加熱日と呼ぶらしいですが、最近では温暖化の影響もあって、気温が35℃になる日も2週間ほどあったとのことで、この期間に最大8日程度の加熱日があったとのこと。それでも27℃湿度50%でしたという話。
これが完成したのが2014年。もう10年以上前ということにも驚かされます。日本の10年前ってどうでした?
ホルガー・ケーニッヒ氏のレクチャー
立て続けに次は、前日の夕食時もご一緒したホルガ―・ケーニッヒ氏からのレクチャー。
ケーニッヒ氏のことも少しご紹介すると、バウビオロギーの世界ではかなり有名な方で、IBN(バウビオロギー研究所)の中心メンバーとして、長年 「人と建築の関係」を研究し続けている建築家であり専門家です。


主催のイケダコーポレーションさんとも昔からの深いつながりがあるようで、化学物質・室内空気・自然素材・エネルギー設計など、住まいの環境をどう整えるかの総合アドバイザーのような存在で、世界中の建築家や技術者が彼の講義を受けているそんな方です。
多くの情報の中から、印象的なフレーズと、気になった言葉をいくつか抜粋してご紹介すると、
・持続可能性の3領域ー閉じない循環と閉じられた循環ー
エネルギー需要としてこれからはこの3領域を意識し設計すべき。
- 費用 建設費、運転費、維持費、解体・除去費用
- LCA 温室効果ガス、環境酸性化、オゾン層破壊、一次エネルギー
- 快適性 居心地の良さ
これらを、閉じずに循環させるということ。
資源に対しての意識が、そもそも日本とは違う。人もそうですが、法律含め国の姿勢が違うと感じました。

成長する資源
欧州では、木をただの建材として見ていなくて、「育つ資源=未来に残せる資源」として扱われています。
ここが日本と大きく違うところです。
使った分は必ず育てるという考え方が根底にあり、建築も資源を循環させる仕組みとして考えられている。

DGNB
DGNB(ドイツサステナブル建築協会) は、簡単に言うと 「建物のサステナブル度を評価するドイツの団体」
日本でいうとCASBEEになると思いますが、そのドイツ版。
CASBEEは日本らしく「省エネと性能が中心」
DGNBはここに「人の健康」と「暮らしの心地よさ」と「長期コスト」まで入ってくる。
評価項目に対する考え方の幅が違い、ここでも差を感じました。


体験ベースで話してくれるので腑に落ちる気づきも多く、私自身がこれまでの経験と知識からお考えていた細い線を思いっきり修正されながら、太くなぞられ上書きされていく感じのレクチャーでした。
最後に模範建物であるIBNの建物を視察し、午前の視察は終了です。
フロリアン・ナグラー氏の実験集合住宅視察
午後からは同じくドイツのBad Aibiling(バート・アイブリング)にある建築家フロリアン・ナグラ―氏による実験集合住宅の視察へ。



この並びで建てられた3棟はそれぞれコンクリート外装、木外装、レンガ外装と外装仕上げが違います。
基本的に全て集合住宅なので、実際に入居者はいます。生活してもらい実データも取りながら実験しているとのことです。
施主は大手不動産デベロッパー会社とのことで、このような実験住宅に一企業が大型投資しているあたりが、既に日本と違うなと思うところです。日本では、メーカーが自社の商品を使っての実験住宅みたいなことはあっても、不動産デベロッパーがそれを実行しているということはあまり聞かない。(私が知らないだけかもしれませんが…笑)
この3棟の他にも、もう少し戸数の多い集合住宅や、その経験を活かして建築している施工中に現場など盛りだくさん。



ということで、ケーニッヒ氏の時と同様に気になった単語を3つに絞って抜粋すると↓こんな感じです。
ローテク(ローテクノロジー)
現地で強く感じたのは、「ローテク=原始的な方法に戻る」ではないということ。
日射遮蔽、蓄熱、風の抜け方、素材そのものの力…、こうしたシンプルな工夫がローテクと言われるけど、そこにあるのは、ハイテクに頼る前に建物そのものが出来ることを最大化するという考え方。
日本でいうと「古い工法に戻る」的なイメージがありますが、ここで見たローテクは全然違う意味として使われていたように私は感じました。
要はここで意味するローテクは、「ハイテクの代替えではなく、ハイテクの上位に存在する」ということです。
建築物理の理解、エネルギーの最適化、断熱・気密の技術等の積み上げた土台があってこその、ローテクが最大限効果を発揮しているイメージです。


マッシブな建築
ドイツで言う「マッシブな建築」とは、簡単に言うと石やレンガのような重い素材でつくる蓄熱性の高い建物のこと。
家の温度変化がゆっくりで、長く住んでも快適さが崩れない。「時間に強い建築」とも言える考え方。
全体的に結構重い建築が多かったように感じました。地震大国である日本では、軽くする傾向があるので慎重に考えなければいけませんが、つくった建築を長く遺す前提で建築しているとも言えます。

地域熱供給
印象的だったというか、こんなことを普通にやっているのか…という事実に驚いた「街ぐるみ、地域ぐるみでエネルギー(熱)をシェア」する仕組み。
工場の排熱や木質バイオマス、地熱などをまとめて街の熱源にして、そこから温水をパイプで各家庭へ送る方式。
家ごとに給湯器を置かないので、メンテの負担が減るうえにエネルギー効率も非常に高い。
CO₂削減の効果も大きく、欧州の政策とも相性がいい。つまり補助金の恩恵も受けられるという仕組み。
簡単に言うと、「町や地域全体でエネルギーを最適化する」という考え方です。

他にも、たくさんの学びがありましたが、長くなりすぎてだんだんブログじゃなくなってくるのでこれぐらいで…(笑)
こうして、ドイツの視察はこの日で終了。ここからはバスで3時間くらいかけて、オーストリアへ入国です。
陸続きなので、この標識↓のAはオーストリア、Iはイタリアを指し、日本で県をまたぐような感覚で国をまたぎます!(※もちろん検問所みたいなものはあります)


宿泊予定のホテルへ到着し夕食後、しばらく部屋でツアー参加者のみなさんと建築談義。こうして2日目を終えました。
※ここまで書いていて思うのは、まだまだ書き足りない所が多く、全て紹介するには長くなりすぎるなと…(笑)
やはり現地で見る、体感するに勝るものはないと思います。
特に建築関係者の方は、文書にならない部分を感じにぜひ行くべきだと強く感じました。
2日目のまとめ
頭では分かってはいましたが日本の住宅レベルと意識の差をまざまざと見せつけられました。
日本では今も「断熱」「気密」という言葉が声高に語られていますが、欧州ではそれは 当たり前すぎて話題にすらならない状況でした。
それは、決して「断熱」「気密」を軽視しているわけではなく、もうそのフェーズはとうの昔に終えているのです。
国がつくる公共建築物も含めてパッシブハウスレベルが当たり前に建っていて、建築における製造~廃棄、資源、環境、未来への循環へテーマが移っています。
日本で断熱等性能等級6とか7とか、G2とかG3とか、気密がどうだとかを言っていること自体が、正直恥ずかしくもなり、この水準に日本が至るまで何年かかるのだろうか?いったい何周遅れているんだ…と静かに打ちのめされました。


ただ、日本が全てにおいて劣っているわけではないのも事実で、詫び錆びある情緒をもった美しさや、仕上げの精度、正確さや綺麗さは日本独自のものがあり、素晴らしい技術と感性だと思います。
だからこそもったいない。もっとできるのに…と思ってしまいます。
そしてあともう一点、地震に関しては、欧州には地震が少ないこともあり、地震大国である私たちの耐震への意識・技術は世界トップレベルだと確信しました。
うまく組合せてよりよい建築を遺して、未来へ継いでいきたいと思います。
以上、なんだか全体のまとめみたいになりましたが…それぐらい衝撃を受けた2日目でした!
3日目 -day3-
この日は世界的建築家・ヘルマン・カウフマン氏を軸に【建築・地域・文化】がどう結びついているのかを全身で感じる一日でした。
まずは、朝6時の散歩からスタート。オーストリアの朝はまだ真っ暗で、けっこう冷える。
余談ですが、チーズの24時間自販機もありました。
一緒にツアーに参加している皆で1時間ほど街を歩いたあと、スーパーでバナナを買って食べました。
どこで食べても同じ味って、なんかホッとしますね(笑)余談でした。




朝食後、バスでフォアアールベルグ州・プレゲンツの森地方のクルムバッハ村へ。
ここでカウフマン氏本人と合流し、実際の建物を見ながら解説を聞くという贅沢なスタイル。この日は、
①コミュニティ施設 → ②福祉施設 → ③村の街並み → ④レストラン → ⑤製材所 → ⑥会社・工場・作業場 → ⑦高台高級住宅という順番で巡りました。
どこに行っても気になるキーワードが溢れてくる濃密さ…。
なかなかの情報量なので特に印象に残ったワードと共に、写真も添えながら書き記していきます。
①地域のコミュニティ施設
1つ目に訪れたのは地域のコミュニティ施設。
この村にはシンボルといってもいい教会(写真上)があるのですが、そこに訪れた後に人が集う場所としてつくられたのがこのコミュニティ施設(写真下)で、中には広いホール、図書室や音楽堂があります。


内装材にはモミを中心にすべて無塗装で採用。
モミは昔「燃料にしかならない」と大工にも嫌われた材らしいですが、90年代に建築家たちが価値を見直し、今では地域に根付いた素材として再評価されています。




外壁は均一に劣化していくように設計されていて、この施設を訪れただけで【経年変化を設計する】という文化が当たり前なんだと強く感じました。
ファサードの失敗(雨の跳ね返りで出来たシミなど)についても隠さず話してくれました。
正直、失敗の話しで一番にあがる話がこのレベルかと…この地域の建築レベルの高さと成熟さを感じました。
そして、しばらく一緒にいてなにより印象的だったのは、住民とカウフマン氏の距離感。
歩けばみんなが笑顔で挨拶。(※決して先生という感じではなく、住人の一人として自然に溶け込んでいる)
建築家が地域の中に自然に存在してる。
こういう関係づくりこそ、本当の意味での【持続可能な建築文化】だと思いました。
さらに、「自治体がつくるものは皆の見本になる」とも言われていましたが、本当にそう思います。
日本の場合、全てとは言いませんが国や自治体が平気で性能の低い建物を建て、住民は「国や自治体がつくっているのならこれがスタンダードなのだろう」と誤認し、そのレベルの低さに気が付くことなく生きていく。本当に問題だと思います。
②村役場を省エネ改修し福祉施設へ
次に見学したのは村役場を全体的に省エネ改修した福祉施設。古い部分と新しい部分が違和感なく調和。
これは、木という素材の「つなぎ力」が大きいとのこと。


この村では、というか国では、福祉施設と賃貸住宅との差が見た目だけでなく性能面でもない。
認定こと取得していないものの、全てがパッシブハウスレベルで建てられているという事実です。驚愕ですね…。
「どんな立場の人にも同じ質を」という考えがすごく印象に残りました。

③村の街並み
街中ではコルク外壁の建物などもありましたが、カウフマン氏曰く「叫びすぎ」と解説。
独特な表現ですが、主張が強すぎる素材ということは伝わります。ただ経年変化の出方を見るのは面白いとも感じました。
とにかく外装材・内装材共に木が多い。この景色・風景が当たり前になるまで30年かかったとのことですが、言い方を変えれば新旧の建築とそこに住む人の意識を違和感なく自然に馴染ませる力が【木】にはあるということです。


そして、もう一つここでも印象深かったのは、自治体が太陽光発電を管理し、持続可能性が高ければ高いほど補助金も増えるという仕組み。こういう「自立する地域」が当たり前になっているのが本当にすごい。


その他にもこの地で行われたバスストッププロジェクトという、当時の若手建築家によりデザインされた多くのバス停の中の一つに、万博の大屋根リングの設計を手掛けた藤本壮介氏の作品もあり、そこも見学しつつ昼食へ。
昼食:畜舎を改修したレストラン
ランチは、カウフマン氏お気に入りのレストランへ。



60年代の畜舎を改修した建物で、格子のリズムをあえてズラしたり、典型的な4.5m角の居間空間を取り入れたりと、伝統を現代に訳し直したような建築でした。随所に日本的な繊細さも感じられ、カウフマン氏の「日本愛」が伝わるディテールがいくつもありました。
⑤素材を見せる製材所
製材所と聞いて、自分が想像していた製材所とは全く違い、本当にサイズが大きい(驚)


ここではいかに素材を魅せるか、そして接着剤を極力使わない木造技術について説明を受けました。
梁の役割や引っ張り・圧縮の考え方など、シンプルだけど奥深い。
地震がほぼないので、日本とは構造において耐震に対する意識の差はあれど圧巻の空間美でした。
⑥会社・工場・作業場
カウフマン氏の会社は約40名の工務店組織。
建築家と職人が対等に議論し、教育を受けた大工が専門職として誇りをもって働く。
そんな空気があたり前に流れています。
地域工務店として、私達と規模が全然違いますが、「文化は自分たちの手仕事でつくる」
皆に会社の思想はしっかり伝わっている印象を強く受けました。
【建築家は構造と素材と手仕事を理解して初めて、良い建築がつくれる】この言葉も響きました。


⑦高台に建つ600万ユーロの邸宅
そして最後は、今回というよりは、今まで見てきた中で最も高価格の個人住宅。
何と600万ユーロ=10億超えの住まい!10億って…(驚)


ここは、言葉で説明が難しいのですが、とにかく映画に出てくるセレブリティ達によるパーティが日々開催されているだろうと想像できる超ラグジュアリーな邸宅です。
住まわれている家族のみなさん、笑顔が素敵で言葉はドイツ語で直接は分かりませんが、底抜けに明るくハッピーマインドの方々で、こういう所に人もお金も運も集まるんだろうなと感じた素敵なご家族とお家でした。
写真で伝わるか分かりませんが、あふれるセレブ感をご堪能ください!







ここで、カウフマン氏とはお別れです。次はきっとまた日本でお会いできる。そんな予感がしています。

カウフマン氏が語ったこの町の本質
心に残ったのは、この地域について語ってくれた言葉の数々。その他もいくつか箇条書きにすると、
- 産業と暮らしのバランスが取れている
- 住民に責任感としっかりとしたコミュニティがある
- 手仕事が尊敬と誇りを生み、それが価値になる
- 驚くような建築ではなく、遺せる建築を
- 主張しすぎない静かな建築こそが、この地にはふさわしい
などなど。
人口1000人の村とは思えないほどの幸福度の高さは、建築だけでなく【文化・産業・教育】が循環しているからこそ。
そう感じました。

ヒッティサウ村へ戻り、学校建築を見学
その後ヒッティサウ村へ戻り、コンペを経て4〜5年前に改修された学校建築を見学しました。
これはカウフマン作品ではありませんが、この地域の建築文化の層の厚さを感じさせる存在でした。



もともとあった既存校舎を活かしつつ、体育館や催事スペースを含めた全体を改修したプロジェクトで、特に心に残ったのが【自治体との共同】が建前ではなく本気で機能している点。
ファサードの格子はEUのパイロットプロジェクトによる助成金を活用して実現したものだったりと、【公共建築×地域技術×ヨーロッパの制度】がうまく組み合わさった事例でもありました。


吸排気は機械換気ではなく自然換気を採用している点も面白くて、土地の気候性や生活スタイルに寄り添ったここでも「ローテク」を意識した建築が建てられていました。
3日目のまとめ
まとめとして、今日一日を通して強く感じたのは…【建築はモノではなく「関係性」でできている】ということ。
素材、経年変化、自治体の姿勢、地域の人との距離感。
どれか一つでは成立しなくて、全部が連動して「文化」となっていく。
ヒッティサウの学校まで見て、カウフマン建築が特別なのではなく、この地域全体が「建築文化を共有している」ということに気づかされました。
地域工務店として、この学びをどう日本で自分たちの街に、地域に落とし込めるか。
果てしなく感じるそこまでの距離と、見てきたことを伝え実現させる使命感と責任とが入り交じり不思議な感情になりながらツアー3日目を終えました。
おそらく伝わったかと思いますがとてもとても濃い一日で、書ききれない程の刺激と学びがありました。
本当に来てよかったと思った。そんな世界的な建築家ヘルマン・カウフマンづくしの1日でした。
4日目 -day4-
朝一番バスに乗り濃い時間を過ごしたオーストリアを後にし、スイスへ入ります。
この日は木造集合住宅【OPENLY】と、世界最先端の木造企業【ブルーマー・レーマン社】を巡る一日。
この日は建築を見る前から、すでに衝撃が始まっていました。
移動のバスの中で、通訳の滝川さんが話してくれたスイスの建築・教育・住宅市場の話。
その一つ一つが、日本との違いをはっきり浮かび上がらせます。
今回は日本との違いをテーマに書いていこうかと思います。
ローテクだけど、社会を支えている建築
スイスの建築は、見た目だけで言えば決して派手ではありません。
でも建築が仕事を生み、教育と結びつき、地域を豊かにし、結果として多くの人を幸せにしている
この構造が、社会の中にきれいに組み込まれています。
日本では、建築は「コスト」や「消費」の話になりがちですが、スイスでは「社会を支えるインフラ」として共有されている。この意識の差が、すべての前提を変えていると感じました。
日本と決定的に違う「職業としての建築」
スイスでは、子どもの約3分の2が職業教育を選びます。週3日は学校、残りは企業で実務。
18〜19歳で国家資格を取り、一人前として社会に出る。
これは、日本のように「とりあえず大学へ」、「建築はきつい・安い・将来不安」という空気とは真逆です。
大工は憧れの職業ランキング上位。若い世代が多く、成長産業として評価されている。
日本では職人不足が深刻と言われますが、スイスでは【職業として尊敬され、将来が見える】
ここが決定的な違いだと思います。
OPENLYに詰まっていた、日本が避けてきた問い
上記を踏まえた上で、この日最初に訪れたのは、2024年竣工のザンクトガレン州にあるヴィナウ村にある木造集合住宅【OPENLY】


この建築は、単なるエコ建築ではありません。
施主は銀行家。建築が生むCO2の多さを知り、「自分のプロジェクトで、そこに向き合う」と決めたとのこと。


日本では、コストが上がる、前例がない、制度が追いついていない、そんな理由で、ここまで踏み込む建築はまだ少数です。この中でも「前例がない」は厄介で、日本人は特に新しい変化を嫌います。いつからそうなったのか分かりませんが、基本的に事なかれ主義で、出る杭はみんなで打ち、みんな横ならびで安心を得る、そんな特性があるように感じます。
このOPENLYでは、セメント・石油由来材料を極力使わず建物をコンパクトにまとめ、立地条件も含めてCO2排出を回避する。そうです。「削減する前に、出さない」これです!この順番が、日本ではまだ共有されていません。
素材でCO2をためる建築
今回のツアーで素材として、多く耳にしたのが「HEMP(ヘンプ)」大麻です。
日本では、大麻と聞いた瞬間、違法の方へ考えが行ってしまいますが、欧州ではサステナブルを代表するような素材です。
このOPENLYでは、ヘンプを含む有機性の建材でCO2を建物内に固定しています。
- ヘンプクリートで約58tのCO₂を固定(※ヘンプクリート:ヘンプを混ぜたコンクリート)
- ヘンプは年2回収穫でき、 種はオイル、繊維は衣料、残りを建材へ
- 木材もCO₂を固定するが、残材が出る
→「回避」と「吸着」の両立ヘンプクリートで58tのCO₂を固定し、木材でもCO₂を貯める。
一方、日本では「木を使っているからエコ」で止まってしまうことが多い。


スイスでは、残材はどうするのか、リサイクルできるのか、次の用途は何か、そこまで含めて設計されています。
設備も同じで、機械に頼りすぎず、壁の厚み、蓄熱、自然換気を最大限活かす。
日本の【設備先行型住宅】とは、思想が逆です。
まさにハイテクの上の【ローテク】を実践している状態です。
集合住宅への本気度
スイスでは、住宅の6割が賃貸。戸建ては中流階級以上の選択肢です。
だからこそ【集合住宅を変えないと意味がない】。
日本では、戸建て性能の話は増えましたが、集合住宅はまだ置き去りにされがち。
OPENLYは「富裕層でも選びたくなる集合住宅」を本気でつくることで、社会全体の環境負荷を下げにいっています。
今でこそ高性能賃貸というフレーズが少しずつ出てきてはいますが、この視点は、日本でも避けて通れないテーマだと思います。

この天井は炭化コルク。断熱材がそのまま仕上げとなっている。
世界文化遺産「ザンクトガレン修道院」
昼食は各自でということで、St.Gallen(ザンクトガレン)の街を散策しながらカフェでいただきました。
ここでの散策も建築メインということで、世界文化遺産にも登録されているザンクトガレン修道院を訪れました。
バロック様式の修道院で、その壮大なスケールで築かれた建築美に魅了されます。
この中にある図書館も圧巻で約17万冊の本が今でも読める状態で保存されています。
思わずため息がでるような美しさでした。
そして、ブルーマー・レーマン社へ向けて再びバス移動です。




ブルーマー・レーマン社が示す「産業としての木造」
ブルーマー・レーマン社は、伐採から設計・物流まで自社で完結する木造企業。




620人の社員、150年続く循環。
木造が「想い」ではなく「産業」として成立しています。
日本にも技術はある。
素材もある。
でも、産業としての構造が弱い。
ここに、決定的な差を感じました。
ルールが未来をつくる

スイスでは、
- 化石燃料禁止
- 電気暖房禁止
- 太陽光義務化
- エンボディドカーボンの証明で助成金


「やりたい人だけがやる」ではなく、社会全体が進む方向をルールで決めている。
日本のように
「努力目標」
「推奨」
とは、スピード感がまるで違います。


4日目のまとめ
ブルーマー・レーマン社の後にも、滝川さんと再開発地域の建築を見学に行ったりと盛りだくさんな一日。

スイスで感じたのは、建築の性能差だけではありません。
【建築をどう社会に位置づけているか】その差でした。
教育、産業、制度、建築。全部がつながっているから、木造が特別なものではなく当たり前になる。
日本でも、できないはずがない。ただ、まだ本気で向き合っていないだけ。
4日目は、「何を学ぶか」より日本が「何から逃げてきたか」を突きつけられた、そんな一日でした。
5日目 -day5-
この日も早朝からバス移動。その前にホテル隣のスーパーで朝食前の朝食(笑)、パンとコーヒーを購入。
このツアーも終盤ですが、日本食が恋しくなることもなく現地の食べ物を好んで食べていました。
5日目は、スイスにおける【素材と森】を深く学ぶ一日でした。
これまで見てきた建築や産業を、もう一段手前から支えている存在。その基盤に触れる日でした。
HAGA社|建築思想がつくる建材に浸透している会社
午前中は、自然素材メーカーのHAGA社を訪問。従業員は約40名と決して大きな会社ではありませんが、ここにはスイスらしい【バウビオロギー(建築生物学)】の思想が色濃く根付いていました。
ここで朝食を頂きながら社長のトーマス・ビューラー氏からのレクチャー、そのまま皆で社内を見学しながらスイス漆喰の製造過程や様々な自然素材を含む建材を学ぶ。


印象的だったのは、「トレンドではないが、必要なものをつくる」という姿勢。
HAGA社はそうした地味だけど本質的な部位を大切にしているとのこと。
レイムボードという粘土ボードの売上が伸びているそうで、その理由も、単なる環境配慮ではなく、調湿・蓄熱・可逆性
といった【建築としての合理性】からきている。このあたりがやはり環境先進国としての強さを感じました。

価格差は、レイムボードと石膏ボードで約10スイスフラン。約2,000円レイムボードの方が高い。
確か1枚辺りの価格差でサイズは日本の3x6版よりは大きく、800円/㎡ぐらい高くなるはず。
違っていたらすみません…(笑)高いのは間違いないが、高いから使えないではなく、なぜそれを選ぶかが共有されている。
他にも刷毛工場から出るゴミを「スサ」として再利用するなど、素材の循環も当たり前のように組み込まれていました。


築400年近い家々が街並みを形成
HAGA社を後にし、同じくHAGA社の建材を使ってリノベーションされ今も住み継がれている1640年に建築された家へ。
移動途中、不要になった本を町の一角に並べ、皆で本も大切に共有していることに驚き。
日本でも図書館や施設内ではあるが、ここでは街並みに溶け込むように置いてある。


リノベされた家の中にも入りましたが、断熱性能はさすが。
しっかりと改修で担保されていました。
ただ、私が気になったのは、床のレベル(水平具合)がかなり悪い。
簡単に言うと床が傾いていました。(古いのである程度は仕方ないが…)
床は剥がして断熱を入れたと聞いていたので、この傾きは直せなかったのか?と質問したところ、「出来るだけ直した」とは言われていました。
言われてましたが、日本だと確実にNGレベルの傾きでした。おそらくこのあたりの精度には日本人の方が敏感で、現地の方は、そう??みたいな感じでしたので、この辺にも国民性はでるのかもしれません…(笑)
ただ、築400年近い家をしっかり改修して、住み継いでいるという事実には頭が下がります。
その後も、スイスの街並みを見て回り、次の目的地へ。


森へ|川上を見ずに建築は語れない
午後は、森林管理の現場へ。ここで一気に時間軸が何百年単位に引き延ばされます。
スイスの森林は、ほとんどが私有林。
そのあり方は、私有林率が約7割を占める飛騨の山に似ていると感じました。

特徴的なのは【恒続林】という考え方。
- 一斉伐採はしない
- 植林もしない
- 自然更新を基本とする
1区画に介入するのは5〜8年に一度。大きな木を伐るときは、必ず稚樹の世話も同時に行う。
重機は道以外に入れない。「森林内の気候を安定させることが、何より重要」
と語るのは、フォレスターのロルフ・シュトリッカー氏。このフォレスターとはスイス(ドイツ語圏)では、明確な【専門職・国家資格】で社会的評価も高い職業です。

簡単に言うと、森の番人みたいな仕事で、森を「育て・守り・使い・次世代につなぐ」責任者。
なんかカッコいいですよね。日本にはない職業かと思います。
森は「管理しすぎない」ことで強くなる
ロルフ氏の話で印象的だったのは、森の中の気候を安定させることが、すべての出発点だという考え方でした。
森の内部が安定した環境で保たれることで、多様な動植物が共存し、バイオマスが活性化する。
その積み重ねが、他には代えのきかない土壌を育てていく。
逆に、夏と冬、昼と夜の温度差が激しすぎる環境を、土壌は嫌う。
だからこそ、伐りすぎず、入れすぎず、「管理しすぎない」ことが、結果的に森を強くする。
ロルフ氏の【土がすべての生産の基盤】という言葉が、強く胸に残りました。

経済と自然は対立しない
もう一つ印象的だったのが、【利益があってこその自然保護】という、ごく現実的な考え方です。
例えばカエデ材。1㎥120フランの木でも、美しい杢が出れば1000フラン以上の価値を持つ。
価値があるから、丁寧に育てられる。丁寧に育てられるから、森が守られる。
自然か経済か、という二択ではなく、両方を同時に成立させる仕組みが、すでに回っている。
ここでもやはり、理念ではなく【現実として成立している】ことが、何より印象的でした。


5日目のまとめ
5日目は、建築の話をしているようで、【森と土と時間】の話をしていた一日でした。
4日目までに見た建築や制度は、すべてこの川上から成り立っている。
素材を選ぶことは、森のあり方を選ぶこと。森をどう育てるかは、社会をどう続けるかという問いそのもの。
建築の仕事をしている自分にとって、一番原点に立ち返らされた一日でした。
そして、ロルフ氏の森に対する情熱が私含め皆の胸に響いた日だったと思います。
6日目 -day6-
こちらに来て以来、読んで頂いている方は分かって頂けると思いますが濃厚な毎日を過ごしていました。
帰国して、振り返ってみると、この日が私にとって最も印象深い日となりました。
ローテクからハイテクへ、そしてハイテクを超えたローテク、更にその先への挑戦を感じた建築事例の視察です。
朝早くいつものようにバスに乗り最初の目的地Wetzikon(ヴェッツイコーン)村へ向かいます。
移動中、恒例の滝川さんによる「スイスの今」レポート(※サラッと始まるこのお話がかなり重要です)
滝川さんのバスでの話
スイスのエネルギーベンデ(Energiewende)について。
エネルギーベンデとは直訳すると「エネルギー大転換」。
スイスではそんな政策が進んでいます。具体的には、スイスの現在のエネルギー構成は、約7割が再生可能エネルギーで、残り約3割が原子力(4基稼働)となっています。
ただし、その原発はいずれも建設から50年以上経過した老朽原発。
競争力はすでになく、2010年・2025年を節目に、脱原発へと舵を切っているとのこと。
そもそも7割が再生可能エネルギーってすごいですよね。
ちなみに日本はというと現在↓のように2023年度で22.9%と2割と少しで、2040年の見通しとしても4~5割です。
15年経っても今のスイスに追いついてない。その頃スイスや環境先進国はどこまで進んでいるのか?
ここでも差を感じますし、なにより、このことを日本では多くの方が当たり前のように知らない。
知らされていない。無関心という事実に怖さを覚えます。

スイスが目指すのは気候中立。太陽光と風力が2トップで、建物と交通を含めた社会全体の電化が前提となっています。
街を走るトラムは完全電化とし、自動車はEV化が進む一方で、「すべてを一気に電化する」のではなく、使わないエネルギーをどう減らすかが先に語られている、そんな状況です。
この話を踏まえスイスのエネルギー政策と、それを実際の建築・暮らしの中でどう実装しているかも体感する一日でした。
集合住宅claywoodプロジェクト
ここが、本当にすごかった!




ここではまず若手建築家の方から自分達が今取り組んでいることの歴史を踏まえたプレゼン。
20年前のローテク建築と、10年前のハイテク建築を比較した結果として見えてきたのは、設備に頼りすぎた建築の限界。
その歴史を学びながら、これからできること、していくべきことして、「技術で解決する前に、設計や思想で減らす」
最も衝撃的だったのは「新しくつくらずにつくること」への徹底ぶり。
そしてCO₂を出さない、吸着する、再利用することへの執着です。
例えば既存の太陽光パネルを屋根ではなく外装材として使う、カーシェアリングや自転車前提の暮らし、建設機械も電動でしかも工事に先駆けて太陽光を設置し、その電力で工事用電力も賄う徹底ぶり、他にもいくつかあげると、
- コンクリートを極力使わない
- レンガを粉砕する機械も自作
- ヘンプ、粘土粉、瓦の粉、土を使った独自ブロック
このレンガブロックに関しては、強度試験も連邦の試験場で実施しており、念の為構造材としては使っていないものの、「構造に使える」という試験結果は得ているというから驚きです。さらに続けると、
- 他現場の材料をリユース
- キッチン、金属窓、シャッターも再利用
- 鉄骨もリユース
- プラスチック再生パネルの活用







スイスには、リユース材を流通させる市場(いわば建築版メルカリ)が存在し、「まだ使えるものを使う」ことが社会として成立しています。
もちろん、中古品を多用しているので人によっては、賛否あり批判を受けることもあるそうです。
でも、「新しいものをつくるには、必ずエネルギーがかかる。」
この現実から目を逸らさない姿勢が、すべての判断の根底にありました。
私は、このプロジェクトを本気で推進し、実行し、現実につくりあげ、そこで人が生活をし暮らしが始まっているという一連の事実に衝撃を受けました。
構想だけではなく、やってのける強さ。この国の未来を感じました。日本はどうですか?
「なぜそこまでやるのか?」
印象的だった問いと答えがあります。
スケジュール上、質問時間はなかったのですが、一つだけどうしても聞きたくて帰り際、無理やり滝川さんに聞いてもらいました。
それは「あなた達はなぜ、そんなにも意識が高いのか?なぜそこまでやるのか?」という直球の質問です。
その答えは、二人とも目を見合わせ【なんでだろう?】みたいな感じで、意外にもスっと出てきませんでした。
二人から言わせると、なぜそんなことを聞くのだろう?といった感じだったのかもしれません。
私は、ここにこの国の凄さを感じ、思わず「これだっ」と思いました。
理由として【好きだから】はあるでしょうが、【持続可能な社会のため】とか【未来のために】とか、この類の言葉はおそらく後付けで、まだ20代のこの若手建築家は生まれた時から、この国の環境意識の中で生きている。
合理性だけではなく、価値観として腹落ちしきっていて、あたりまえに身に沁みついている感覚なのだと。
そして、彼らがつくる建築そのものが、その環境意識をまた後世へつないでいく、メッセージとなっていくのだと。
これが日本にはまだない。まだ少ない。
教育を含めたこの環境を作ること、これこそがこれから私達、地域工務店が「性能のその先」にやっていくべきことだ。
そう心に深く刻んだ日となりました。

都市のインフラとしての「緑」とチューリッヒの夜
この日はその他にも、巨大ホームセンターや、滝川さんに解説してもらいながらの屋上緑化の事例、坂茂氏に設計の新タメディア本社ビルなど、チューリッヒにてトラムに乗りながら街歩きをしギリギリまで建築に触れていた日でした。
一点だけまとめると、チューリッヒでは、ヒートアイランド対策、生物多様性、洪水対策から、平屋根の緑化が義務化され、その分、下水道料金が安くなるなど、市民にとってのメリットも明確に設計されています。
緑は「趣味」ではなく、都市インフラとして機能しているそんな街であり、取り組みをしていました。




これは、余談ですが、最終日の夜に参加したメンバーとチューリッヒの街を電動キックボードで駆け抜け、高台から皆で見た景色もかけがえのないものとなりました。
6日目のまとめ
6日目を通して感じたのは、スイスではサステナブルが「意識の高い人の選択」ではなく、社会の前提条件になっているということ。
エネルギーをつくる前に、まず使わない。新しくつくる前に、使えるものを使う。
その積み重ねが、結果としてエネルギー政策にも、建築にも、都市にも表れている。
「ここまでやる必要があるのか?」ではなく、「ここまでやらない理由があるのか?」
6日目は、そんな問いを突きつけられた一日でした。
そして、取り巻く環境が人にあたえる「無意識のあたりまえの壁」を改めて感じました。
まだまだ、やるべきこと、やれることがありそうです。
欧州視察を終えて
今回、私はドイツ・オーストリア・スイスの3か国を初めて訪れました。
キッカケはこのシリーズの①で書いた通りですが、今回このタイミングで来れて良かったと思っています。
先日、参加者によりオンライン報告会も行い一般の方含め多くの方に視聴頂けたようです。そこでも、参加者がそれぞれの感想を述べていましたが、その会では帰国して一呼吸置いた上で、皆の目線合わせができたことが何よりだったかなと思います。今回欧州を訪れた建築従事者は建築ができることの可能性に希望を持つことができたと思います。
私達は、間違いなく今の世界の課題、日本の課題から目を背けてはいられないフェーズに入っています。
日本との違いとして総じて感じたことは、とにかく行政と教育、そこに生きる人の環境や資源、未来への意識の違い。
なんとなくは分かっていたものの、現実を突きつけられ、国、自治体、地域、人レベルでのあまりの差に、果たして日本がここに辿り着くまでにいったい何年かかるんだろう…と打ちのめされながらも、少なくともここまでは行けるという希望も入り混じった、形容しがたい感覚でした。
一方、近年日本では等級6とか7とかG2とかG3という断熱性能の話や気密性能の話しが、ようやく浸透しつつありますが、欧州ではその更に上をいくパッシブハウスレベルであたりまえに建築されており、話にもでてきません…とっくにそのフェーズは終えています。これが率直なレベル差です。
更にこれが、戸建てに限った話ではなく、賃貸はもちろん、日本でいう国や県、市が建てる公共建築も全て当たり前にパッシブハウスレベルです。
繰り返しますが、断熱・気密云々の話しはもう遥か昔に終えており、次にできることを一般の方々が当たり前に意識しています。もちろん国民全員というわけではありませんが、割合の話しです。
カウフマン氏も言われてましたが、「国や市がつくるものは皆の見本でなければならない。」
本当にそう思いますが、日本はどうでしょう?
日本の環境に対する感覚はやはり先進国の中で遅れていると言わざるを得ませんが、ただ全てにおいて日本が遅れているかというと、そんなことはないと感じています。
アメリカにいた時も思いましたが、日本人がつくる建築の精度や情緒ある美しさ、気配り、心遣い、きめ細やかさ、日本の手仕事は世界でもトップレベルだと私は思います。また、地震に対する技術も日本の方が頭一つも二つも抜けています。
欧州の優れた環境や資源への意識と感覚を、日本の技術と共に実現できれば、他に類を見ないぶち抜けたモノづくりが出来ると私は思っています。勝ち敗けだけでは、もちろんないけれども、よりよいものを後世へと遺していけると思います。
ツアー最後の方は、小さくても出来ること、つなげていけること、少しでもこの感覚を日本へ伝えるという責任と義務、ある種の使命感を持って視察していました。
わかっています。田舎の地域工務店ができることなど、もちろん小さな小さな力ですが、その思いが一つでも増えていくことが大切だと思っています。
今日もできることをひた向きに続けていきます。
時間は限られています。今できることは、今しておかないと、本当にしたい時にできなくなる。
できたものができなくなった時どう思いますか?悔しいですよね…だからこそ、今やります!
欧州には数年内にまた答え合わせに行きたいと思いますので、今は地元岡山からできることをとにかく進めます。
以上、全8回。なんとか1月中に書き終えました!
主催のイケダコーポレーションさんはじめ、滝川さん、現地でお会いしたみなさん、一緒に学んだ仲間のみんな、全ての人に感謝です。ありがとうございました!
Danke schön!
